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燃料電池開発を加速させる新しい逆設計手法

北米トヨタ研究所では, 燃料電池の研究者が, 世界的な “水素社会” の実現という自動車メーカーのビジョンに近づくために, シミュレーション主導の手法を開発しています.

BURLINGTON, MA(2023年5月23日)-北米トヨタ研究所(TRINA)は, 燃料電池の流体場プレートの研究開発プロセスを加速するために, シミュレーション駆動型の新しい逆設計手法を開発しました. 本手法は, 主要な性能目標を設定し, その目標を満たす構造的な流体場形状を生成するようアルゴリズムに指示します. TRINAチームは, COMSOL Multiphysics®ソフトウェアを逆設計のワークフローに統合することで, この手法を開発しました.

TRINAの研究員であるYuqing Zhou氏は, “逆設計手法は, 現在のデザイン実務に革命を起こすことができると考えています” と言います. “私たちは, 長い旅路の次のステップを可能にしているのです.” TRINAの研究チームは, この方法を, 水素, 酸素燃料電池のようなマイクロリアクターで流体の反応物の動きを制御する流体場マイクロチャネルプレートの設計に応用しました.

 TRINAチームの流体場プレート試作品の1枚の写真.

TRINAチームのデザインに基づく金属製流体場プレートのプロトタイプ.

TRINAは, 化石燃料を燃やすエンジンや暖房器具, 発電機を, 水素から電気を取り出す燃料電池に置き換える”水素社会”の実現に向けて, トヨタの研究開発チームの大きなネットワークの一部となっています.

COMSOLのマーケティング担当副社長である Margaret Lemus氏は, “燃料電池技術は, クリーンなエネルギーを世界的に提供する可能性を持っています”と述べています. “そのためには, より効率的な技術が必要であり, 設計を最適化することが重要なステップとなります. シミュレーションによって, 研究者がさまざまな選択肢を検討し, より効率的な燃料電池の設計につながる情報に基づいた決定を下すことができるようになるのは, とても喜ばしいことです. “

流れ, 反応, あるいはその両方を考慮した設計の最適化

Zhou氏らは, 研究の過程で, 設計を最適化する前に, 設計プロセスを最適化する必要があることを認識しました. ”より複雑なシミュレーションで得られる結果を効率的に再現する方法を模索していました.モデリングの複雑さを犠牲にすることで, より精巧な設計をより短時間で検討できるようになりました”と Zhou氏は語ります.

流体の流れに最適化した場合, 生成されたマイクロチャネルの経路はまっすぐで平行であり,  側枝がほとんどありません. また, 反応の均一性を優先して目的関数の重み付けを調整したところ, 複雑な形状のマイクロチャネルが生成されました.

 4種類のマイクロチャネル設計の圧力分布を虹色で表示した3Dシミュレーション画像の2×2マトリックスです. 各シミュレーション画像の上に, 各マイクロチャンネルの白黒2D拡大レンダリング画像を表示

TRINAチームのモデルによるシミュレーション結果. 4つの異なるマイクロチャンネル設計による圧力分布を示しています.

TRINAの研究チームは, “Chemical Engineering Journal” 誌に発表した論文で, これまでにも自然な形やフラクタル, 階層的な形状の流路を先験的に選択する実験が行われていることを指摘しています. TRINA自身の研究について, Zhou氏は ”このような大規模な分岐流れ場を, 所定のレイアウトを前提としない逆設計のアプローチで発見したのは今回が初めてです” と述べています.

トヨタの燃料電池開発への道のりは, COMSOL ユーザーストーリーギャラリおよび COMSOL Day の基調講演でも詳しく紹介されています: バッテリ&燃料電池

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基調講演の録画を視聴する

また, TRINAチームの詳細はこちら, "Chemical Engineering Journal"に掲載された研究論文はこちらをご参照ください.

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